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ふたば/TOA怪文書/アシュナタ前提ティアナタ

あの名文をまた読みたい人用の保管庫

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作者:不明

『ファーストキスは海の見える場所で、心を預ける人に捧げる事があなたにとって最も幸いである』
キムラスカ・ランバルディア王国に伝わる乙女の戒律。少女なら誰しもが憧れるその一説に心惹かれるのは王女たるナタリアも同様だった
明日執り行われる結婚式の会場を海の見える丘に設定したのも、彼と、アッシュと共に幸せを目指そうとする彼女なりの決心の表れだった
ルークの記憶を背負ったアッシュのこれからは想像を絶する苦難に満ちているだろう。内外に課題は山積し、立場は意志を何重にも縛り付ける
それでも、それは彼が幸せになれない理由にはならない。深い闇の中にあっても幸福を諦めない強さを、ナタリアは確かに持っていた
それは彼女の生来の気質と、なによりあの旅の中で育まれた大切な財産だった
「アッシュ」と呟いてみてから、ナタリアは確かな決意を込めて口を開く「生きていきましょう。共に」
胸の前で祈るように組まれた手を強く握り、ナタリアは決意を新たにしていた
窓辺から春の朝日が差し込み、つがいを見つけた小鳥達が連なって嬉しそうに鳴いている
それは宮殿に不審者が侵入した旨の報告を受ける、ほんの少し前の出来事だった

不審者を一目見たナタリアは即座に拘束を解除させ、荒れきった身なりと髪をメイド達に整えさせてから応接室へ招いた
彼女の隣にアッシュはいない。結婚式の前日、様々な公の手続きを必死に捌く彼にこれ以上の負担をかけるわけにはいかないと思考した上での決断だった
やがて応接室の扉が開く。不審者は両手を力なくぶら下げ、ゆらゆらと重心を定めない足取りでナタリアの方へと歩み寄る
ナタリアは声のトーンに気を遣いながら、努めて明るく彼女に話しかけた
「久しぶりですね、ティア。その後はどうですか、食事はきちんと取っていますか」
ティアは何の表情も見せないままナタリアに近づいていく。彼女が今何を考えているのか、ナタリアには図りかねていた
「ティア」
ついに言葉に窮したナタリアが彼女の名前をつぶやくと、ティアは突然足を止めてナタリアの方をじっと見つめた
沈黙が二人の間に隙間なく敷き詰められていく。毒の空間に投げ込まれたような息苦しさを感じたナタリアは、息を殺してじっと彼女の声を待った
「ルーク」
我慢に我慢を重ねたナタリアへようやく手向けられた言葉は、ただそれきりだった

「いえ、わたくしは」
たじろぐナタリアの返事も待たず、ティアは倒れ込むようにナタリアへ抱き着き睦言を繰り返した
「ルーク。ルーク。ルーク。ルーク……」
心を病んでいる。そう判断したナタリアの直感はいつも以上に正しく機能していた
「わたくしはルークではありませんよ、ティア。病院に行きましょう、専門の方にかかればきっとよくなりますわ」
自身にかけられたティアの重みを細腕で懸命に支えながら、ナタリアは気丈に微笑んでみせる
ティアは表情を一切動かさないまま器用に眼球だけを回転させて彼女を見やると、憎悪すら込めた視線でその笑みを射抜いた
「あなたは、ルーク、じゃ、ない、の?」
再び直感が走った。精神は専門外とはいえ医術を扱うナタリアが一目で分かるほど、ティアの症状は末期的だった
刺激の仕方によってはお互いの命に関わる事態に発展しかねない状況下で、彼女に与えられた選択肢はそう多くなかった
「ルーク、ねぇ、ルーク」
「ティア。本日は何をしに来られたのですか」
肯定も、否定もしない。結局、ナタリアにはそれしかできなかった
ただ対応したのがアッシュでなくてよかったと、その僅かな幸運に心から感謝していた

ナタリアが逸らした話題にティアが対応するまでのおおよそ五分間、応接室は沈黙していた
その間ティアは顔を赤らめ、時には震え、時には目じりに大粒の涙を溜めてナタリアを困惑させた
その内心で起こっているであろう精神活動を想像する事そのものが既に狂気の所業であると、ナタリアはその都度自らを戒めて強く拳を握った
やがて何度も突っかかりながら、ティアはようやく己の言葉を語り始めた
「ルーク。私、ずっと言いたかった。好きなの。大好き。この世の誰よりもあなたのこと、愛しているの。なのにごめんなさい、言えなかったの。ごめんなさい」
ナタリアは返す言葉を失っていた。呆然とする意識の中で、体中の血液が手足の先からとめどなく地表へ零れ落ちていく感覚がナタリアを心底震え上がらせた
「ルーク。ルーク。キスをしましょう。あなたが夜の海のようって言ってくれたから私、ずっと海にいたのよ。私、ちゃんとあなたが好きなものになれたわ」

瞬間、突如としてティアの体温が急激に低下した
肌が触れ合う箇所からたちどころに凍り付いてしまう、少なくともナタリアにはそのように感じられる無明の極寒だった
まさしく夜の海のような冷たさと暗さを湛えたティアの肉体はナタリアにぴったりと絡みつき、彼女からあらゆるものを奪い去っていく
そうしてティアの深淵そのものの眼と唇が無表情のまま自らに接近してくる頃には、ナタリアの本能はすっかり恐怖と後悔に染まっていた
いっそ狂ってしまいたい。泣きわめいて暴れて、この状況が起こる前まで時を巻き戻してほしいとさえ思った
だが、それでもナタリアは気高かった。乱れる本能を理性で抑え込み、ティアにとって最善の選択肢を掴もうとする強さが彼女にはあった
それ故にナタリアはあくまでも拒絶の声をあげず、まっすぐにティアの深淵を睨み続けた

唇と唇が触れ合う瞬間、思わず顔を引きそうになったナタリアをティアは逃がさなかった
両腕をナタリアの首に絡ませて固定し、いつまでもいつまでも、盲目的に唇を合わせ続けた
ナタリアは自身を絡めとる冷たい腕に抱かれながら、今にも千切れ果てそうな心を繋ぎとめる事で精一杯だった
「ルーク」
息苦しくなったナタリアが呼吸のため口を開いた瞬間、ティアは彼女の口膣へ容赦なく舌を捻じ込んだ
体温を無くした何匹ものミミズが口の中を一斉に這い回る感覚に蹂躙されたナタリアの意識はいよいよ遠のき、一瞬でも気を抜けば二度と帰ってこれない場所へと連れ去られる寸前まで至っていた
そうした方が楽だと絶望する心の声から必死に耳を塞ぎながら、ナタリアは自身に残されたありったけの力を込め、繋ぎ止めるようにしてティアの体を抱きしめた
ティアはしばらく苦しそうな息を漏らしていたが、やがてナタリアを捕らえる腕を解き、力なくその場にへたり込んだ
ナタリアが触れた彼女の両肩には、ほのかな人間の体温が戻っていた

ティアは震えながらナタリアを見上げる。その眼は深淵から解放され、代わりに底知れない後悔と絶望に染まり切っていた
「ナ、タリア……?私、なんてひどい事を、あなたに、私」
ナタリアはこの日初めてティアから目を逸らした。それがどんな感情から来る行動なのか、ナタリア自身にもわからなかった
「いいのです、ティア。もう全て終わりました。だから、いいの」
幼子をあやす母のように、ナタリアはティアと目を合わせないまま優しく抱擁する
ティアは彼女の腕の中で終わらない懺悔を繰り返しながらいつまでも泣き続け、やがて操り糸が切れたようにぱたりと眠りに落ちた
ナタリアは眠るティアをそっとメイドへ託し、丁重に扱う事と専門医に診せる事、監視を付ける事を命じて応接室から下がらせた
頭を下げたメイドが扉を閉じた瞬間、一人残されたナタリアは俯いて深く息を吐いた

再び静寂が支配した応接室で、ナタリアは自身の唇を指でなぞった
二人分の唾液が混ぜ合わされた粘着質の銀糸が口の端から延び、プツンと切れる。ナタリアの涙腺が決壊したのは、それと同時だった
ドアを背にして床に座り込み、声にならない嗚咽を上げながらナタリアは泣いた
泣きながら、乙女の戒律や仲間への思い、アッシュへの罪悪感がない交ぜになったグロテスクな感情を腹の中で何度も味わった
やがて湧き上がる悪感情は耐え難い吐き気となってナタリアの胃を執拗に攻撃し、朝食を無残な吐瀉物へと変えて応接室の床に撒き散らす
手足や服が汚れるのも構わずあらゆるものを吐き出しきったナタリアは最後に数度激しくせき込んだ
そしてすっかり感情を無くした瞳でふらふらと立ち上がると、結婚式の準備をするため部屋を後にした
無人の応接室の窓から見える林檎の樹は陽の光を受け、沢山の葉を付けた枝を天へと伸ばしている
その枝の一つで、つがいを見つけた小鳥達が連なって嬉しそうに鳴いていた


ふぁぁ……今日は終わりじゃ終わり
なんじゃ坊……寝物語は一日で終わらせぬものだと何度も言っておろうに
いいか?女の欲はこれ合欲、男の欲はこれ業欲。坊が坊である以上は欲張らずに欲張りを受け入れる事が肝要じゃ。さもなきゃモテんぞー
次回はそうじゃなぁ、結婚式後の初夜でも……え?もうやった?いやー魔女も長いとどーでもいい事は忘れてしまっていかんの!
では改めて次回は『テイルズオブザレイズ・レイドイベント!エミルとマルタの結婚式~仲人はマギルゥ~』乞うご期待じゃ
……坊も中々にねちっこい性格よな。ベルベットに毒されておらんかー?だがこうなれば仕方あるまい!
占いを交えたマギルゥクイズで決着を付けようではないか!見事当てれば続きを話してやるぞー?
では問題!ナタリアとアッシュの間に子供はできる?できない?フィッチ・ウィッチ・フィッチ!
……ふふ、坊ならそう言うと思っておったよ。ま、マギルゥクイズは正解こそが不正解。不正解も当然不正解
よって坊はまだまだ修行が足りんかった訳じゃな!ええい知らぬ知らぬわ儂はもう寝る坊も寝ろ!
やっぱり未来は魔女のみぞ知るってわけでおやすみマギンプイじゃよー!

ふたば/TOA怪文書/アシュナタ

あの名文をまた読みたい人用の保管庫

スレッド:http://img.2chan.net/b/res/492580313.htmより
作者:不明

ルーク・フォン・ファブレとナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディアの儀礼的婚姻が終わった日
新郎新婦となった二人は豪奢極まる一室に押し込められ、今まさに初夜を迎えようとしていた
部屋の入口には物々しい装備の警備兵が列を成して待機し、部屋への侵入と脱出とを妨げている
ありとあらゆる方面からこの初夜の重要性を突き付けられていた二人は、無意識のうちに抱いていた逃避願望を早々に捨て去っていた
「……お風呂、先に頂きましたわ」
俯くナタリアの傍を無言で通り抜けるルーク。その顔は薄暗い室内照明で半端に照らされて見え辛くなっていた
闇の中で曖昧になったルークの輪郭に二人分の影を見つけてしまったナタリアは己の眼を呪い、歪んだ顔を反射的に手で覆い隠した
それからルークが風呂を終えて帰ってくるまでの間、背を曲げてベッドに腰掛け心の中で「違う」と唱え続けた

初夜に臨むにあたり、二人は両家から万全のバックアップを得ていた
前記の通り部屋には鼠一匹の侵入も決して許さない厳重な警備が敷かれている
ルークの食事は一週間ほど前から精のつくものが中心となった献立に変化していた
更に性知識。公人としての教育に時間を割かれ満足な性教育が受けられなかった二人を慮って専門の教官が配属され、互いを悦ばせるための技術を教育した
ナタリアもルークも決して覚えが悪い訳ではない。人形相手に完璧な動作をしてみせた二人に教官は太鼓判を押し、お世継ぎが産まれる日も遠くないと歓喜した
あてがわれた部屋は家具の色調から見下ろす風景、空中に漂う香りに至るまで徹底的に計算し尽くされており、館の一室とは思えないほどの淫靡さと美しさに満ち溢れいる
それでも。それだけの援助を受けても尚、ナタリアの心は乾ききっていた。それはルークも同じであった
多くの人が幸福と信じてやまない二人の一夜は、当事者達にとって精密に構築された地獄でしかなかった

風呂を終えたルークが部屋の明かりを完全に消したのは羞恥心からではない。ただ、ナタリアが己の顔を見ず済むようにと計らった心遣いだった
「始めるぞ」
声が届いた瞬間、怯える子供のように身を縮め強く目を閉じるナタリア。その繊細な心の機微を指先の震えから察したルークは一刻も早く終わらせようと懸命に彼女の体を撫で続けた
五分。三十分。一時間経ってもなお、二人の内心に火は灯らない
ただ闇の中で蠢き続ける自らを俯瞰したルークは、その無様を倒してきた化け物のようだと自嘲する事しかできなかった
「もう十分です。挿れてください」
それは顔を腕で覆い隠したナタリアの、深い諦めから発された言葉だった
ナタリアの膣に潤いが足りていないのはルークから見ても明らかであったし、ルークの陰茎も全くと言っていい程勃起していない
だが、だからといってナタリアの懇願に反論する言葉を持たないルークは、彼女に従う他なかった
行為の手を止めたルークは、メイドの一人に予め渡されていた小瓶の中身を一気に飲み干す
それは毒だった。フォニムドクシボグモと呼ばれる蜘蛛の毒には、強烈な苦痛と不快感を引き換えに陰茎を隆起させる作用があった

痛い程腫れあがった己の陰茎をナタリアの秘所にあてがうルークの顔が痛苦に歪む
ナタリアに見せずに済んだのがせめてもの幸いだったと、そう思う他には何一つ慰めが見つからなかった
完全な潤滑不足の状態にあるナタリアの膣口はルークの侵入を拒み続け、それでもと強引に破り進もうとする度に二人分の苦悶が漏れ出す
ようやく処女膜を姦通した頃には、二人共痛みに涙を浮かべ心身の疲労から肩で息をする有様だった
それでも自分から動かなければこの状況は決して終わらないと理解していたルークが腰をナタリアにぶつけたその刹那、痛ましい悲鳴が部屋中に響く
いつかの記憶と重なる、その悲痛極まる声に気圧されたルークは思わず腰を引き、ナタリアの膣から己の陰茎を引き抜いた
「ごめんな、ナタリア」
自然と謝罪の言葉が出るのもルークにとって無理からぬ事だった。ただ、それが彼女にとって最も残酷な仕打ちだったと気付くまでに要した数秒を、ルークは心の底から悔やんだ

仮にアッシュなら、ルークが完全なアッシュであったなら決してここで引いたりはしない
ナタリアが泣こうが喚こうが、それでもこの地獄を終わらせるために前に進んだはずだ。いや、そもそもこんな哀しいだけの逢瀬になるはずがない
だがナタリアには今のルークを責める事はできなかった。それだけはしてはならないと、彼女は己を強く戒めていた
「う、うっ……」
誰が悪い訳でもない、ただ世界に引き裂かれた末の結末に、ナタリアは溢れ出す涙と嗚咽を堪えきれなかった

実時間にして二時間が経過した頃、部屋の雰囲気はもう行為に及べるような類のものでなくなっていた
幼子のように泣き続けるナタリアの手を握る事しかできないルークには、この胸が締め付けられる責め苦が永遠に続くように思えた
奈落に向かって螺旋を描く思考と耐え難い悔恨の念がお互いの心中を見たし、相手の事を思いやる余裕を失わせていた
そして未来。結婚した二人は、永遠に引き延ばされた夜を毎日のように味わうだろう
同じ部屋で、同じベッドで、世継ぎが出来るまで闇の中で行為を繰り返すのだろう
そんなごく当たり前の未来は、二人の絶望を肥大化するに足る暗黒だった

完全に黙り込んでしまった二人を包む部屋の静寂は、廊下の方から響く大きな物音で初めて崩された
メイドや警備兵の慌ただしい足音が離れていくに従って、物音はどんどん近付いてくる
武器を構えた二人の目の前で扉から転がり込んできたのは大きな人形と侵入者、アニス・タリトンだった
「あ……ご、ごめん……ねぇ!ティア知らない!?今朝いなくて、皆で探して、どこにもいなくて……!」
涙を浮かべる目の下に濃いクマを作ったアニスの言葉は珍しい程にたどたどしく、二人は理解にしばらくの時間を要した
だがやがて事態が国の保護観察下にあったティア・グランツの脱走であると判明してからのルークの動きは迅速だった
日々の苦労と今回の心労が重なり今にも倒れそうなアニスをナタリアに預け、服を着こんで足早に部屋を出ていく
「ねぇ……私達……これからどうなっちゃうのかな……」
その問いに答える者は誰もいない。ナタリアはベッドの上で弱り切ったアニスを強く抱きしめ、奥歯を噛み締める事しかできなかった



ふぁぁ……んあ?ハハハ坊よそう忙しく肩を揺らすな、今宵はここまでじゃて
そう怒るな……あくまでこれは寝物語。結末まで話しきると明日の愉しみがなくなるじゃろう?
ベルベット達も寝ておるし、なによりワシがもう眠い。寝る魔女は育つが寝ない聖隷は背が伸びんぞー
次回『テイルズオブザレイズ・レイドイベント!怪人マスクメロンと悲しみのマギルゥ』に乞うご期待じゃ
……しっかたないのう、坊の情熱に免じてあやつらの今後だけ占ってしんぜよう
そーれフィッチ・ウィッチ・フィッチ!
ほほう。なるほどなるほどこれは興味深い……ハハハ、結果を教えるとはひっとことも言っておらぬぞ坊
未来は魔女のみぞ知るってわけでおやすみマギンプイじゃよー!

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