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ふたば/TOA怪文書/アニルク

あの名文をまた読みたい人用のまとめ

スレッド:http://img.2chan.net/b/res/493004098.htmより
作者:不明

「大丈夫だよ…私がいっぱい幸せにしてあげるから…楽しい事だっていっぱい教えてあげるから…
色々な事を知って……このご褒美みたいな奇跡の世界を楽しもうよ…ね……?
辛い事なんて忘れて…楽しく過ごそうよ…ねえ…お願いだから……」
そう言うとアニスは服を脱ぎ捨てて、そのまま抱きすくめる様に俺に跨ってきた
寝室の灯りは消されれていて、アニスがどういう表情をしているかは影がかかってわからなかったけれど
触れ合った肌は微かに震えていて、声だってあまりに余裕のない、いつものアニスとはあまりにかけ離れた声色で
ここまで追い詰めてしまったのはきっと俺だから、これは俺が悪いんだと思う
ごめんな、アニス
こんな駄目な俺だけど、せめて仲間のみんなくらいには笑っていてほしいのに
異世界にまで来たのに、こんな顔をさせちゃうなんてな

…正直、そこからの事はあまりよく覚えてない
あまりに濃厚で、全てが新鮮で、断片的な記憶以外、あやふやにぼやけてしまっている
繋がったところから溶けていく様な物凄い熱と、脳を焼く様な快感、そして時折聞こえるえづくようなアニスの嬌声
お互い動きはぎこちなかったし、俺はその時その行為が何を意味しているのかもよく解らないくらい、熱に浮かされていたけれど
それでも覚えているのは、月明かりに照らされて一瞬だけ見えたアニスの表情が、とても気持ちよさそうで、それ以上に悲しそうで辛そうな、色々な感情が混ざり合ってグチャグチャになったような顔だった事で
少しずつ動きを取り戻した体で、掻き抱いたその体はあまりにも細く、小さく感じた
そうだよな、アニスはまだ13歳で、色んなものをたった一人で背負い込むなんて、おかしいはずなのに

アニスと俺が、今みたいな”関係”になった切っ掛けは、あの日だと思う
戦いの最中に怪我を負って、意識を失ってしまったあの日
怪我自体は大したことは無くて、すぐに治癒術で治ったらしいんだけれど
ガイは普段からは想像もできないくらいに荒れて、周りが怯えるくらいに怒りを表したって言うし、ジェイドも珍しく取り乱して、大層な設備で診察をしてくれたらしい
俺が弱いからかもしれないけれど、みんなには本当に心配をかけたみたいで。意識を取り戻すまで、半狂乱になりながら俺に縋りついていたアニスには、殊更に酷い心配をかけたみたいで、本当に申し訳なくなった
俺やティアと、それ以外のみんなが違う時間から来た事自体は知っていたけれど、
やっぱり俺はいつの時代でも、みんなに迷惑ばかりかけていたのかと思うと、やっぱりどうしようもなく情けなくなったんだ

意識を取り戻して、自分の不甲斐なさを目の当たりにして
俺は大丈夫だし頑張るからそんなに心配しないでくれって、集まっていたみんなにそう言っても、全員の表情は暗いままだった
「何でルークが頑張らなきゃいけないの?あんなに辛い世界で、辛い思いばっかりしてたのに…なんでもっと辛くなろうとするの!?」
絞りだすようにアニスはそう言ったけど、でもこれは俺がやらなきゃいけない事で、俺の役目だから
「この世界は幸せでしょ!?なんで帰ろうとなんてするの!?なんでそんな…自分を使い潰そうとするの……嫌だよ……イオン様も…ルークも……みんな…やだよぉ…」
激情を堪え切れずに泣きだしたアニスを止められる言葉を俺は持っていなかったし、ジェイドやガイも、ティアすらも、それを止めることは出来なかった
みんな一様に辛そうで、でも俺には前に進むくらいしか思いつけなくて
ごめんなさい、せめて皆が幸せになれるように、俺は頑張るから。

アニスは最近、俺と一緒にいることが多くなった
ガイからも距離が近いななんて言われたし、ジェイドはアニスと何か、俺についての話をしていたのを見かけた
…まあ、今の俺とアニスの関係からしたら、そう思われない方がおかしいのかもしれないけれど
でも、アニスが俺に向けている感情は、多分恋とか愛とか、そういうのじゃない気がする
俺にはまだそういうものが今一わからないけれど、きっとあれは、かつての俺が師匠に向けていたようなものなんじゃないかなんて、ふと思った
でも、アニスは俺なんかよりずっと強いから、俺みたいに人の言ってる事を自分の全てだなんて思う事は無いと思う
俺は空っぽだけど、みんなは違う。
誰かのためにすべてを使い潰すのは、俺みたいなレプリカだけで良いと思うんだ

今のアニスは俺が笑っていれば幸せだというから、だからせめて俺は笑おうと思う
早く元の世界に戻って、俺は俺のやることをやらなきゃいけないけれど、この世界にいるうちだけは、アニスの望む通り、楽しく生きるなんて贅沢もいいのかもしれない
「大丈夫だよ、ルークは何も気にしなくていいよ…もっとルークにいろいろな事を教えてあげるから、私がなんでもしてあげるから……だから楽しいことをいっぱいしよう?この世界が楽しい所だって、幸せに生きていい所だって、そう思おうよ…ね?」
夜、俺の寝室でそう何度も言いながら縋りついて来るこの細い体を、突き放すことは俺には出来そうにない
そのか細く震えた願いを無碍にするような資格は、俺にはないと思うから
この関係が、いくら間違った物だったとしても、それでアニスが満たされるなら
それは、俺なんかでも役に立てているって事なんだと思うから

「大丈夫だよ!ね?私は今はとっても幸せだから!……ねえ、ルークも楽しい、よね……?
楽しくないなら言ってね?大丈夫だって、私が何でもしてあげるから…大丈夫だよ?私、いっぱい頑張るから…
…アハハ!やだなあルーク!私は今とっても幸せなんだって!これ以上ないってくらい!だからそんな顔しないでってば!
……だから…ねえルーク…ルーク様、私と一緒に居てください…一緒に居れば忘れられる気がするから…こんな幸せな世界に、私は今ここに居てもいいんだって…ルークだって一緒にいていいんだって…アハハ、何言ってるんだろう…忘れて…ね?」
絞り出すようなアニスの告白、毎夜のように肌を重ねるようになってから、時折アニスはとても辛そうな、何かから必死に目を逸らしているような表情を浮かべる様になった
だけど、アニスにとっての辛いことや苦しいことを、俺みたいな存在が一緒にいるだけで紛らわせることができるなら
それは良い事なのかな…俺にはよくわからない
もっと長く生きていれば、わかったのかもしれないけれど
無い物ねだりをしてもしょうがないし、せめて今を壊れないようにするのは、悪い事じゃないよな、きっと。

別の世界の出来事は、城の外すら深くは知らない俺には想像もつかないようなことばかりで、何もかもがまるで夢みたいな話ばかりで。
他の世界から来たって言うルドガーと一緒に、自分の世界で何をしたか、何をしたかったか、何をしたいのか……そんなことを語り明かしていたら思いのほか盛り上がって…そのまま食堂で寝落ちしたのは…その、少ししょうがない事だと思う
でもやっぱり、だいぶ行儀の悪い事だったし、あとでティアやガイに怒られるかもな…と思いながら部屋に朝帰りして、最初に目に入ったのは、扉の前で蹲っているアニスだった

俺の足音を聞いて、姿を見るが早いかアニスは安堵と喜びの入り交じったような表情を浮かべて、ふらつきながら駆け寄って来て
「居てくれてよかった、置いて行かないでくれてよかった、居なくなってなくてよかった、ごめんなさい、ありがとう」
そう何度も繰り返しながら俺に縋りつくアニスの体はとても震えていて、あまりに弱弱しいその体を抱きしめながら、俺は俺の至らなさを後悔する事しかできなかった
神様、この世界に神様という存在が居るのなら、どうか俺はどうしたらいいのかを教えてください。
こんなどうしようもない俺でも、消えなきゃいけない俺でも
誰かに必要とされているのなら、誰かに存在を求められているなら、俺はどうすればいいんですか

多分、今日という日を忘れることは、俺には出来ないと思う
この世界でも、元の世界に帰ったとしても、そして、消えてしまったとしても、ずっと。
嬉しそうに、何かの希望を見出したような歓喜の表情と、何かから必死に目をそらそうとしているような泣き出しそうな瞳は、あまりにも不揃いで
アニスのそんな表情を見たのは、これまでの、元の世界を含めても、一度も無かったから
付き添って部屋を訪れたジェイドは、何か強い決意を感じる、珍しいくらいに堅い顔をしていたけど
そんなジェイドを見て訝しんだ俺の声にも満足に反応しない程に思考に没頭しながら、目だけは強い決意を湛えていて
こんなにも真剣な、何かの覚悟を固めたジェイドだって、初めて見たから
でも、そんな仲間の知らない一面なんかよりも、それ以上に、何かが、決定的に変わってしまうような予感が、俺の中を満たしていて
「ねえルーク、ルーク様、聞いてください、ずっと一緒にいてください
大丈夫だよ、私が全部責任を取るから、誰にもルークの事を悪くなんて言わせないから
みんなでいっぱい、たのしく、ずっと…
ねえ、私ね、お腹に――――――――



はぁ~坊よ…そう急かすでない、今宵の寝物語はここまでよ
随分と長々と話したからのう、舌を回し過ぎて儂は疲れ果てた、疲労はお肌と魔女の敵じゃぞ?
それに何より喉も乾いた、乾いて乾いてガラガラじゃよ
沈黙は金、口を守る者はその生命を守る。まあなんでもよいんじゃが
何より皆すっかり寝ておるからの、これ以上話すのは無粋じゃろうて
次回『テイルズオブザレイズ・レイドイベント!人形使いと音素の子』に乞うご期待というものよ
……ああ、今日は占いもなしじゃぞ、分史の先を語るのも無粋、未来を詠むのも無粋という物じゃ
不満そうじゃのう坊よ、だがワシはもう寝るモードに入っておる故幾ら肩を揺らしても無駄じゃがな
ハハハ聞こえぬ聞こえぬ聞かぬ動じぬフィッチ・ウィッチ・フィッチ!
全ての未来は魔女のみぞ知るってわけでおやすみマギンプイじゃよー!

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