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2ch/十二国記エロパロ/驍李

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スレッド:2chエロパロ?
作者:不明


06 ほのかに香る




一人になった寝台の上に仰向けに転がり、ぼうっと彼方を見上げていた。
投げ出された身体は自分で思うよりも疲れているのだろう、寝返りを打つことすらたまらなく億劫で、女はそのままの姿勢でただ瞼を閉じたり開いたりを繰り返していた。
何も纏わない肌に包まった絹の冷やかな感触が心地良い。
伸ばした指が彼女の筋の取れた肢体に触れて静かに落ちた。

まだ熱が残っている。
思い出した途端じわじわと熱くなる頬を誤魔化す為に女は再び衾の中に潜り込んだ。
じっと、産まれたばかりの獣のように身を小さく埋めながら、重い瞼を閉じ内奥から幽かに響くその音に耳を傾けていた。


―――とうとうこの一線を越えてしまった。

それは彼女が最も恐れていたことだった。
過度の寵愛を受けることは朝の中で要らぬ荒波を立てる要因になりかねない。
それが分かっているから、どんなに苦しくても己の築いた壁を超えないようにと思っていたのに。
女は後悔していた。
あの男の甘美な言葉にまんまと酔わされて痴態を晒したことが愚かしいのか。
決して知られてはならないと堅く誓った本心などとうに知れていたことが悔しいのか。
それでも目を閉じると思い出すのはあの男の声だった。
それも、常とは―――聡明で威風堂々と座す、全臣民から崇拝される彼の本来の姿とは違う、色を孕んだ甘い囁き。
女は包まった衾の中で己の喉元を強く抑えた。
心音と似た速度で迫る奇妙な足音は、彼女自身も気付かない内に彼女の心を捕らえていた。

臣下として相応以上にあの男に近付くことは玉座を汚すことにはならないのか。
(だから周りの中傷や根拠のない噂を恐れるのだろうか)
この背徳者、と指をさされることが怖いのか。
(それはあの男を貶めることにはならないのだろうか)
――――でも、私が本当に恐れていることは……?

女は目を閉じてゆっくり息を吐いた。
次第に苦しくなる呼吸は間隔の狭まる動悸を伴って彼女を暗沌とした恐怖へ叩き落とす。
もはやどんなに留めようともがいても、溢れてくる考え達を抑えきれなかった。


私が恐れていることは。
あの男の戯れに現を抜かして、ようやく手にした王師将軍の椅子を失うこと?
ろくに職務を果たせなくなって、あの男を失望させること?
一時の戯事に飽いたあの男が、私ではない誰かを抱いてしまうこと?

私が恐れていることは。
私が恐れていることは。

私が恐れていることは、どうしてあの男のことで溢れているのだろう。




弾ける泡の様に導き出された答えは驚くほど単純で、女は声を失った。
「本当に…」
自分でも呆れるほどに、気が付けば彼のことを想っている。
女は苦く笑って、少しだけ泣いた。

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