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2ch/十二国記エロパロ/驍李

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スレッド:2chエロパロ?
作者:不明


04. 絡みとる糸




しどけなく寝そべる女の姿態は常より増して艶かしい。
それが普段は決して見せることのない顔だから、艶が映えてえも言えぬ色を醸し出していた。
男は指に絡めた彼女の髪をたぐり寄せながら眼下に広がる光景を一巡し、満足そうに笑った。

見上げる瞳は僅かに潤み、視線を返せば睫毛を伏せる。
逸らした視線を交えることなく女は染まった頬をさらに赤らめ、固く結んだ唇から漏れる吐息を指で覆った。
そんな仕草の一つ一つが愛しいと思う。
もはや触れていない部分など無いというのに、今だってどうだ、指が触れただけで熱の冷めない身体は小さく震えている。
男は女の反応を逐一確認するようその肌に指を滑らせた。
なぞる指の動きに合わせて喘ぐ女は頭上の敷布に逃げるように縋った。


他の男にこれを見せてやりたい。
喰いこむ肌も、切ない鳴き声も、これは自分だけのものだと見せ付けてやりたい。
この衝動を抑えようとは思わない。
内に広がる欲望を自覚するのに幾らも掛からなかった。
男は手元にあった酒杯に手を伸ばした。
肌蹴た胸元に滲む汗の雫が輝く。
その上を硝子の盃から零れた酒が雪の肌を伝って衾に落ちた。
ほんのりと熱を持って薄く染まる肌に舌を這わせ、滴り落ちる雫を追って濡れる身体に熱を与えた。
両腕を奪えば捕われた獲物は逆らうことなく、色よく鳴きながら自分を受け入れた。
その声。
その艶。
全てが自分の為にある。
ただ一つを除いては。


「  」

その名を呼べば応えるように女の身体が震えた。
震えて、躊躇うように伸ばされた腕が褐色の肌に絡みついた。
男は女の額に唇を落として一言も発することなく彼女を抱き寄せた。

女の本心がどこにあるのか分からない。
自分と彼女の間には男と女として、…人と人として特別な感情があったはずなのに、今となっては確かなものではない。
我々は変わってしまった。
あの短すぎた夏の日、自分を前に穏やかに微笑む彼女にもう二度と会うことはないのだ。


男は女を抱き締めた。
重い瞼を閉じ、ゆっくりと息を吐いて、ただ彼女の熱にその身を埋めた。
自分が思うよりも強く、彼女を抱き締めていた。






(06.09.05.update)

2ch/十二国記エロパロ/驍李

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スレッド:2chエロパロ?
作者:不明

02. 夢の淵で




その女のことを思い浮べる時、多くの人はかつての美しい姿を描くだろう。
凛々しさと優しさを兼ね備え、信に厚く朗らかで誰からも好かれる女性。
それは彼女の本来あるべき姿だった。






きつく巻き付けられた包帯を一つ一つ丁寧に解く。
まるで何かのまじないのように固く絞られた結び目を緩めると、のぞいた湿布が強い匂いを放って剥がれ落ちた。
あらわになったその左腕は長い時間同じ形に結ばれていたものだからすぐには形が戻らない。
用意した湯に浸し握り締めた指を一本一本解きほぐして、ようやく緊張の解けた拳が開いた。
掌に残る凹凸を撫でると傷が痛むのだろうか、女は僅かに顔を顰めた。


あの日から彼女は掌に触れられることを極端に嫌がった。
あまりにも露骨に拒絶するものだから、無理に問い詰めれば、苦渋の色を浮べた女が差し出したのは彼女の隻手。
その先にあった残骸を見て男は絶句した。
開かれた彼女の左手は爛れた肉の皮が固さを伴って薄黒くくすんでいた。
幾つもの小さな肉刺が出来ては潰れ、出来ては潰れ。
随分と長い間そんなことを繰り返したのだろう。
完治しない内にまた新しい傷をつくるものだから治癒に体が追い付いていなかった。
恐る恐る伸ばした手でその残骸を掴み、男は傷の一つ一つを凝視した。
触れる己の手は自分でも分からない程小さく震えていた。
女は少しだけ苦しそうに笑った。
男は何も言わずに触れた彼女の手を握り締めた。
彼が伝えることのできる言葉などなかった。



今、目の前にいる女にかつての面影はない。
凛々しく、武人にしてはたおやかで、時折見せる愛らしい一面に変わりはないけれど、もう以前のように剣を振るうことは叶わないだろう。
武門に身を置くものとしては死にも近いその代償が如何ほどのものか、想像に及ばない。
それなのに彼女はこうして笑うことが出来る。
弱音も吐かず、愚痴も零さず、ただ己に与えられた宿命を受け入れようと必死に生き足掻いているのだ。

この腕に触れるたび、男は一人思う。
忘れてはならないものがある。
この手に触れることでしか分からないものがある。
声もなく戒めるそれは皮肉にもこんな形でしか手に入れることができなかったけれど。

手放すものか。
この手を、この指を。




男はいつものように女を抱き寄せると、掴んだ彼女の指に自分のものを絡めて瞼を伏せた。
言葉もなく、愛撫もなく、ただ静かに抱き締めた。

彼女を前に願う祈りはいつも同じだった。




(06.09.16.update)

2ch/十二国記エロパロ/驍李

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スレッド:2chエロパロより
作者:419 様

獣の目

正寝の驍宗の執務室に呼ばれた李斎は、気付くと榻に押し倒されるような格好で驍宗と対峙していた。
「李斎……」
 常には冷たいまでの視線が熱を帯びているように李斎には見えた。
 だがそれは獣が獲物を狙う眼だ。
「主上……?台輔のことでお話があるのでは……」
「それは口実だ。お前を呼び寄せるための……」
 驍宗は囁きながら李斎の胸元に顔を寄せた。
 罠――。
 それに気付くとぞっ、と恐怖が背筋を這い登った。
 慌てて身を捩るが、すぐに腕を押さえつけられる。足をばたつかせてものしかかってくる身体は揺らぎもしない。
 唇を噛み締めながら李斎はきっ、と驍宗を睨みつけた。
 それが、李斎に出来る最後の抵抗だった。
「良い貌だ。お前にはそんな貌が良く似合う……」
 驍宗は口元に笑みを浮かべて李斎を見た。
「初めて見たときから、欲しいと思っていた……」
 そう言って驍宗は李斎に口付けた。固く閉ざした唇をこじ開けて、驍宗の舌が滑り込む。
 熱く、激しく絡められたそれに、李斎は抵抗できないまま引きずられていった。
 躰の奥、脳の奥が蕩けていく。
 ――喰われる。
 そう、思った。


「んっ……ふっ……」
 濃厚な口付けを交わしながら、驍宗の手がやや性急に李斎の長袍を剥ぎ取る。
途中、布地が裂けたことも驍宗はお構いなしだった。
「人が……来ます……」
 そう口にした。その身を被うものが無くなる心細さで。
「誰も来ない。蒿里以外は入れるな、と言い置いてある」
「では、台輔が……!」
「来るやもしれぬな」
 素っ気無く驍宗は言い捨てて、性急なそぶりで李斎の身体に残る襦裙の胸元をこじ開ける。
 李斎は血の気が引くのが分かった。
 台輔がここに来るかもしれない。
 あの幼く、汚れのない麒麟にこんな場面を見られるかもしれないと思うと、身震いがした。
「怖いか?」
 驍宗が手を止めた。笑みも何もない、射抜くような眼。
「……いいえ!」
 それを真っ向から跳ね返して、李斎は驍宗を睨みつける。

「そうだろうとも。お前なら、そう言うと思っていた」
 驍宗は軽く口の端を上げて笑った。李斎のそれが、虚勢に過ぎないと気付いたのだろうか?
 李斎の胸元に顔を埋めようとした驍宗は李斎の胸を押さえつけるさらしに気付いて苦笑した。
「……無粋だな……」
 李斎の首筋に噛み付くような口付けを落として、そのさらしをも外そうとした。
 李斎は唇を噛み締めて胸元に伸びる手を振り解こうともがく。
 あっさりと手首を掴まれ、それは叶わない。
「残念だな。わたしはお前が欲しいのだ。諦めてやる気はない」
 ぞくっ。
 また鋭い視線に捕らえられる。身動きが出来ない。
 李斎は小さく息を吐く。
 この躰ひとつ差し出して済むのなら、それで良い。心まで奪われるのでなければ。そう覚悟を決めて驍宗から視線を逸らした。
 ただ、どうか台輔がこの房間には来ませんように……。
「李斎、何を考えている?別の男のことか……?」
「だとしたら、どうだというのです?」
「妬けるな」
 短くそう言い切った驍宗の手は荒々しい。
 強引に両手を頭上に押さえつけて、露わになった白い胸にむしゃぶりついた。
 日頃押さえつけられてはいたが柔らかさを失っていない胸を、痕が残るほどきつく揉みしだき、紅く色付く蕾を噛む。
「……っ……」
 痛みで、李斎がわずかに声を漏らした。
「すまないな、わたしは優しくは出来ない」
「…………」
 今更、何を言うのだろう?
 優しかろうが冷たかろうが、無理矢理奪われることには変わりがない。
 覚悟を決めた李斎には、もうどちらでも構わないのだ。
「李斎……」
 驍宗の囁く声に熱が加わった。
 肌に触れる息が熱い。
 李斎はぎゅっと目を閉じた。
 ――怖いのか、わたしは……。生娘でもないのに。
「李斎、李斎……」
 驍宗の唇が李斎の名を囁きながら、首筋、胸元、脇腹、太腿といった柔らかい場所を這う。
 触れられた場所が痺れるような気がしてくる。
 驍宗の手は飽きもせず胸の突起を弄っていた。痛み以外のむず痒さのようなものを感じる。
 それを振り払うように李斎は身を捩る。
 心は冷えているというのに、じわじわと躰が熱を帯びてくるのが分かった。
 ――駄目だ……!
 声を上げそうになって、李斎は唇を噛み締めた。
 意識すればするほど、感覚が鋭くなっていくことに李斎は気付いていない。
 李斎の意識とは別に、躰が勝手に反応を始めていた。
 驍宗の手が、唇が蠢くたびにその肢体がぴくり、ぴくりと震える。
「声を、出さないのか……?」
 驍宗が耳元で囁く。
 李斎はふるふると首を振って拒絶した。
「……強情なことだ。それでこそ、なのだが……」
 驍宗は忍び笑いを漏らしながら身体を起こした。身体をこわばらせている李斎を抱き上げ、自分の足元に座らせる。
「舐めてくれ」
 驍宗は李斎の手を自分の逸物に導く。
 軽く勃ち上がったそれに触れた李斎がぴくりと震えた。
「出来ないわけはないだろう?」
 李斎はしばらく唇を噛み締めたままじっと手元を見詰めていたが、意を決したように唇を寄せた。

長袍に隠れたそれを取り出すと、あまりの大きさに驚いた。
 しなやかな指で一撫でして、先端に口付ける。そのまま口に含んで舌を絡めた。すると、それが大きさを増す。
 それに戸惑いながら、茎を舐め上げるようにする。
 口腔愛撫というものの経験がないわけではなかったが、慣れているというほどの数をこなしたこともないので、どうしていいのか、李斎には分からなかった。
 ただ、たどたどしく舌を動かし、その下にあるふくらみを柔らかく揉む。
 驍宗が、括ることもなく流されたのみの李斎の髪に触れた。
 李斎は愛撫を続けながら上目遣いに驍宗を盗み見た。
 ――また……、あの眼だ……。
 鋭い視線がまた李斎を射抜く。その瞬間、かっ、と躰に火が点いたように熱くなった。腰の奥が疼き始める。
 李斎の気が緩んだのを見逃さず、驍宗は李斎の顎を掴んでさらに深く、自らのモノを飲み込ませた。
「……んっ……!」
 喉の奥を貫かれ、眉根を寄せて李斎は思わず声を上げていた。
「こんな貌も出来るのだな」
 驍宗の声もやや上擦っている。
 李斎の頭を掴んで、さらに激しく動かす。
 じゅぷじゅぷと淫らな音を立てて、李斎の愛撫は続いた。
 その口の中で、驍宗のモノは大きさと固さを増していった。
 ――口の端が切れそうだ……!
 李斎は必死になって驍宗の動きについていく。口一杯に押し込められるものは苦しいが、止められない。躰の奥が熱い。その熱に浮かされているようだ。
「……なかなか上手いな……」
 驍宗の手が李斎の耳朶に触れた。
 李斎の躰が跳ねる。
「そろそろ感じてきたか……?」
 驍宗は李斎を胸に抱き寄せると、腰にまとわりついたままだった袍を取り去る。ゆっくりと腰を撫で、先ほどから熱くなっている秘部に触れた。
 くちゅ。湿った音が響いた。

「かなり溢れているな」
 驍宗の肩に顔を凭れかけていた李斎は羞恥でかっ、と頬を染めた。
「……李斎……」
 驍宗は強引に李斎の唇を奪った。
 逃れられないように、頭の後ろを押さえつけ、歯と歯がぶつかるほど激しく舌を絡める。
「んっ……っ……」
 堪らず李斎は声を上げていた。
 驍宗はさらにきつく李斎の舌を絡め取り、吸い上げる。あまりの激しさに、口の端から唾液が滴る。
 驍宗の手は休むことなく李斎の秘処を弄っていた。
 上と下、両方を同時に愛撫されて、李斎の躰が震えた。腰が砕けるような快感が突き抜ける。
 溢れ出た蜜は驍宗の手を濡らしていた。
 驍宗は無骨な指を差し入れ、ぐちゅぐちゅと音を立てて掻き回す。
「…………!…………」
 李斎は息を止めて必死に声を押さえる。
 声を出せば終わりだと思った。
 躰だけではなく心のすべてまでも、奪われてしまう。
「李斎……」
 唇が離れると、驍宗が熱っぽく囁く。
 こんなことだけでも、躰の芯が蕩けるようだ。
 ――駄目だ……!
「李斎。声を、聞きたい……」
 李斎は激しく首を振る。
 一声でも上げてしまえば、きっともう、止まらない。
「頑固だな。そこが良いんだが……」
 驍宗は李斎を押し倒すと、大きく脚を開かせた。
 露わになった秘処に口付ける。
「……っ!」
 李斎の腰が跳ね上がる。
「李斎。気持ち良いんだろう?」
 ぷっくりと紅く膨らんだ肉芽を舌で突付き、蜜に濡れた花芯に指を差し入れて内壁を擦り上げる。響く淫らな水音。
 李斎が噛み切れるほど唇を噛み締めた。きつく握られた手は血の気が引くほど白くなっている。
「全く……、躰はこんなに悦んでいるというのに。可愛いな……」
 驍宗の言葉に笑みが混じる。
「どうしたら、お前がわたしのものになるのだろうな」
 驍宗が手を止めた。下から李斎を見詰める。
 李斎は戸惑ったように首を傾げた。
「わたしのものになれ、李斎。――もう、逃がさぬ」
 紅い瞳が李斎の心を貫いた。
 目線を逸らすように仰け反らせた白い首筋に、驍宗が顔を埋めた。
「……あぁ……」
 ついに、李斎の唇から喘ぎ声が漏れた。
「それで良い……」



 驍宗は満足げに笑った。
 李斎の脚を抱え上げ、屹立した宝重で最奥まで一気に貫いた。
 しとどに濡れた李斎の花芯はするり、とそれを受け入れる。
「あっ……!」
「……っ……、熱い、な……」
 息を詰めて驍宗は呟く。
 李斎を見詰める驍宗は楽しそうだった。結い上げた髪が解れ、汗ばんだ顔に掛かっている。
「李斎、李斎……」
 譫言のように囁きながら、驍宗は律動を続けた。
「あんっ、はっ、あ、あ、ぁ……」
 熱い吐息を吐き、激しく揺すぶられながら、李斎は快楽の底へ引きずり込まれていく。
 知らず知らずのうちに腕を驍宗の首に絡め、その逞しい胸に縋りついた。
 そうせずには、いられなかった。
 そんな李斎に目を細めると、驍宗は李斎の腰から背中を撫で上げた。
 鍛え上げられているものの、まろやかさを失っていないその躰こそ、驍宗が求めてやまないものだった。
「やはり、思ったとおり、だった……」
「……んっ……、なにが……ですか……、はぅっ!」
「……良いな、お前の躰は……」
「……っ!!」
 李斎がきっ、と顔を上げた。
「躰だけなら、それに相応しい者がおりましょう!」
「躰だけならな。わたしが欲しいのはお前だ、李斎」

驍宗は李斎に口付ける。
 李斎の口に唾液を流し込んでおいて、唇を離した。
「気丈で冷静で……、想像していた通り、好い女だった」
 二人の視線が絡み合った。
 睨む者と睨まれる者と。
 もうすでに、獣と獲物ではなかった。ただ、男と女が居るだけだ。
「ずっと気になっていた。……だから蓬山で出逢えたときは嬉しかった」
「…………」
 驍宗が一度動きを止めた。
 汗ばんで張り付いた李斎の髪を驍宗がぶっきらぼうに払いのけた。
 どちらからともなく二人は唇を重ねていた。
 李斎の心に、言い様のない想いが浮かんで、じわじわと広がっていく。
 甘い。
 すべてを奪われるというのに、胸は甘く疼いている。
 ――驍宗さまがわたしを……?
 李斎にとっても、驍宗は憧れであり、敬愛すべき主君だった。
 その覇気も、苛烈さも、人を惹き付けてやまない人柄も、そのすべてが李斎には眩しかった。
 それ故、ただ女としての躰を求められることは屈辱だった。
 だが、今、驍宗の腕の中で求められているのは、将軍である自分だ。
 そのことが、少しだけ誇らしかった。

 繋がった場所からは止めどなく蜜が溢れている。
 お互いの口腔を貪りながら、再び律動が始まった。
 耳に淫らに響く音が更なる興奮を呼び、快感を呼び、動きは止まらない。
「んっ……はぁっ……ああっ……!」
 堪らず李斎が声を上げた。
 突き上げてくる驍宗は激しい。躰の奥の奥まで貫かれて、崩れ落ちそうだ。
「良いな……、お前の中は……」
 耳元で囁く驍宗の息も荒い。耳朶に触れる吐息が、李斎の肌を粟立たせた。
 驍宗はそんな李斎の肌を撫でる。滑らかな背中はじっとりと汗ばんでいる。
 李斎の躰はぴくぴくと素直に反応した。下半身に熱が篭る。
「……絡み付いて、離そうとしない……」
 驍宗は一度、己を引き抜くともう一度ゆっくりと挿入する。
襞はしっかりと驍宗を締め付けて、熱く絡んだ。
 驍宗は息を止めて、大きく腰を回すようにして、李斎の内部を掻き回した。
「……あ、あぁっ……!!」
 感じやすい部分を刺激され、李斎は背中を仰け反らせて榻に倒れこむ。
 うっすらと涙を浮かべて喘ぐ李斎に、驍宗は笑みを浮かべて李斎の腰を引き寄せた。
 顕著な反応を示すその場所を、何度も何度も刺激する。
「……もっと乱れてもいいのだぞ……?」
 ただすすり泣くような喘ぎ声を漏らすのみの李斎を、驍宗が煽った。
 固くそそり立った胸の先端を舐め、赤く充血した肉芽を弄る。
「……はぅっ……ん!」
 李斎の手足がぴん、と伸ばされる。そろそろ、限界が近かった。

 その時だった。
「――驍宗様?」
 遠慮がちな声と共に扉が叩かれた。
「!」
 李斎は冷水を浴びせられたかのように凍りついた。
 その声は紛れもなく自国の麒麟、泰麒のもの。
 反射的に驍宗の顔を窺う。
 狼狽する李斎とは対照的に、驍宗は口の端を上げて笑った。
「あぁ、来たようだな……」
「……そんな……!このようなところを……」
 李斎は身体を起こし、驍宗から離れようとする。
 だが、驍宗はそれを許さず、腕を伸ばして李斎の腰を抱いた。最奥まで貫く。
 顔をこわばらせている李斎の胸に顔を埋め、鎖骨から首筋に唇を這わせた。
「驍宗様……、入っても宜しいですか?」
 あどけない泰麒の声が聴こえる。
 駄目だと思いながらも、驍宗が与える刺激は李斎にとっては快感でしかなかった。
「李斎……、気持ち良いのか……?」
 小声で囁きながら驍宗は柔らかい乳房を揉みしだく。
 李斎は唇を噛み締めて漏れそうになる声を押さえた。
 驍宗を止めなければ。こんな場面を見られるわけにはいかない。
 すっかり敏感になった躰は、李斎の理性を以ってしても抑えきれそうにない。
 ――欲しいのに……!でも……駄目だ!
 必死で自分を押さえようとする李斎を、驍宗は満足げに見ていた。

「蒿里――」
 驍宗が扉の向こうに呼びかけた。
「今取り込んでいる。出直してきてはくれぬか」
「……はい。わかりました」
 残念そうな響きを含ませた返事を返して、泰麒は自室へと戻っていったようだった。
 だんだんと足音が遠くなる。
 それを李斎は息を詰めて待っていた。躰の奥がじりじりと焦れている。
 それは随分と長い時間のように感じられた。
「――行ったな」
 泰麒の足音が完全に消えると、驍宗が李斎の耳元で熱っぽく囁いた。
 ほっと息を吐いた李斎を抱え上げ、榻に座った自分を跨がせるようにした。
「自分で動いてみろ。欲しいだろう、これが――?」
 李斎の蜜でテラテラと光る宝重の先端で李斎の肉芽を刺激する。
 李斎は息を呑んで驍宗を見詰めた。
 与えられる快感に負けるように、李斎はゆっくりと腰を沈めた。
 ぐちゅ、っと淫らな音を立てて、そそり立つそれを李斎が飲み込んでいく。
「……あぁ……」
 李斎の内部が驍宗のモノで一杯になる。
 待ち望んだ快感に、李斎の躰が震えた。躊躇いがちに腰を動かす。
「我慢しなくて良い。乱れてみろ……」

「でも……」
 そう言いながら、動き始めた腰は止まらない。
 固く屹立した肉芽が擦れて、李斎は首を振る。うねるように快感が腰のあたりから広がってくる。
「あ、あ…っ、ぁああ…!」
 驍宗は激しく下から突き上げた。
 そのたびに、きゅっ、と李斎の内部が狭くなる。
「……あぁ、良いな……」
 溜息混じりに驍宗が言った。
 柔らかい胸に触れ、その先端をこりこりと摘んだ。
「あん、あ……っ!」
 甘い反応が返ってくる。
 荒い息を吐きながら李斎が手を伸ばす。驍宗の首を抱き寄せて口付けを強請った。
 ねっとりと舌を絡めて、絶頂へと駆け上がる。
「あ、ああああぁぁぁぁ……ん!」
 李斎が高く啼いて、きつく驍宗を締め付けた。
 驍宗もそれに負けるかのように精を放ったのだった。


 李斎は驍宗の胸に凭れて、荒い息を静めていた。
 驍宗がそんな李斎の背中を撫でている。
 我に返った李斎がそれに気付いて、慌てて身体を退けようとした。
「……良い。もう少し、このままで……」
 驍宗がそれを遮った。
 逞しい腕できつく抱きしめる。
「主上……」
 少し困った顔で、李斎は驍宗を見た。
 紅い瞳がまっすぐに李斎を見ていた。
 ――完全に、捕らえられたのだ。この眼に……。
 李斎は小さく息を吐いて、気だるい倦怠感に身を委ねた。

2ch/十二国記エロパロ/驍李

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2chエロパロ版(url不明)
作者:413 様

「鴻慈」 驍宗×李斎


<鴻慈
路木。荊柏を謂ふ。泰王驍宗願ひて得たり。
季を問はずして白花開き、実は鶉の卵の如し。乾きて炭と成せり。
(元、荊柏は黄海にのみ育てり。是により戴の民冬を越す。
故に民、鴻基におはす者の恵む慈しみとして是、鴻慈と呼びたり。)
是故に転じて――>



 「主上、もう、このようなことは止めに致しませんか――?」
 寝室。書と、官服に、幾許かの武具。主の性質を示すかのように、
必要最低限の調度品がそこには並びたてられ誂えられたその部屋に、李斎はいた。
卓には二つ、小ぶりな品の良い杯と、酒瓶とか置かれている。
今宵李斎は驍宗に、平生自分の行う働きを労うが為に呼ばれたのだ。
 李斎がこの部屋に足を運ぶのは、何も初めてではない。
もし単に自分を労うだけだというのであれば、何も寝室でなくとも、
幾らでも部屋はあった。それでも驍宗が寝室に、と他人の目を盗んで自分を呼んだのは、
それなりの事情故であった。その、事情というものが、
政(まつりごと)における内密な話でもないということにも、
李斎は気付いていた。先刻の台詞はそれを踏まえた上でのものであった。
 「――李斎?――一体、どうしたと言うのだ。そのような――。」
 「――この様なことが、露見すれば配下の士気に関ります――。」
 何か、言われたか。黙し、ただ、俯く李斎に、驍宗は呼びかけ、
そっと顔を近づける。猶も面を上げようとしない李斎に、李斎。と、
再び驍宗は呼びかける。
 「――驍宗様は、御存知で有らせられぬのですか?
私が、驍宗様のお情けにより、此処に召し上げられたのだと――!」
 顔を背ける。面を上げた瞬間に目にした、驍宗が紅いその眼を見張った様を、
見つめることは出来なかった。その視線から逃れるように、視線を、
首を横へと背け、胸に溜まっていた汚濁を吐き出す。
 「――私は、そのようなつもりで此処に参ったのでは有りません。
私がここに参ったのはただ、戴を思うての、一心で御座います。
そうして、驍宗様が、そのような想いで官を召し上げる方でないことも、
存じております。されど――。」


 「されど、何だ李斎。言うて見よ。」
 ――この様なことが、露見すれば配下の士気に関ります――。
 先刻と同じ台詞を李斎が音にすると、部屋には、沈黙という帳が下りた。
李斎はただ俯いたまま。驍宗はしばし、静かにそんな李斎を見つめていた。
互いに何も発することはなく、やがて、ちん。と、
軽く器が触れる音が部屋に響いた。次いで、こぽこぽという僅かな水音。
音は繰り返され、何かと思って面を上げると、一人、驍宗が杯を呷っていた。
 「……驍宗、様……。」
 なんだ。と、声がかかる。紅い瞳に、射竦められながらも。飲み過ぎは、
身体に毒です。どうぞ御自愛を。そう告げて、席を立とうと椅子を動かす。
瞬間。腕を、掴まれた。
 「な……。」
 何をするのだと抗議の声を上げようとしたところで、声は喉で押し留められ、
くぐもった音のみが、僅かに除いた唇の隙間から、零れ出る。息つく間もなく、
強く舌を絡められ、漸く解放されたときには脳が幾分まわっており、つ。
と唇からは、細くて長い糸が引かれた。そのまま間を置かずに抱き上げられ、
寝台の上へと強引に運ばれる。慌てて身を起こそうとするが、力で敵おう筈も無く、
両の腕は頭の上で固定され、普段王の髪を結わえているその紐で、留められた。
 「驍宗様!これは……!」
 声は、またしても言葉にならずに、驍宗の唇によって塞がれる。
舌を絡めとられ、息ついたと思うとまた、くちづけを与えられる。
くちづけに混じった、僅かな酒気。それも相まり再び眩暈を起こしかけたところで、
李斎。と、声が掛けられた。ぼんやりとしながら面を向けると、じっと、紅い眼は自分を見つめていた。
銀糸の髪が、赤銅色の肌に零れ落ちている。綺麗な人だと。こんな状況で、女ながらありながらもそう思った。


 「これは、仕置きだ。」
 言われ、さらりと衣をその手で剥かれる。纏った幾重もの官衣は、
やがて一枚の薄布を残し、全て寝台の下へと、投げ出された。
白地の肌着を縫い止める腰に巻かれた一本の帯も、驍宗の手によってするりと解かれ、つ、と。
指先を一本、首筋から両の谷間、腹部へと文字でも描くかのように、走らせられた。
自然、薄布はさらりとずれて、まるで両の頂のみを覆い隠すかのような微妙な広がりをみせて、扇を描く。
見られまいと僅かに膝を上げ、重ね合わせた白い両の太腿の合間からは、隠し損ねた赤茶けた糸がちらりと覗く。
その様を、驍宗は目を細め、眺める。
 ……酔われておるので、御座いますか。震えの混じった李斎の言葉は、そうかも知れんな。
という驍宗の言葉とともに、僅かな喘ぎに転化する。ひとつ、またひとつ。と、
白磁に負うた傷を丁寧に、指でなぞり、舐め解く。そうして、時に思いついたかのように、
李斎の唇を吸った。そうやって、肌に触れられ、愛撫され。されども両の山にも、
下腹部へと下りた秘めたるところにも触れられずに、
変わらず薄布は両の頂きに覆われたままで、やがて真から湧き起こるむず痒いような、
火照りのような感覚には自分でも、気が付いた。
 「見よ。李斎。……良い、眺めだ。」
 指摘をされて目を向けると、そこには、ぴんと張り詰めた両の頂きがあった。
薄布を、その頭によって持ち上げている。誰の目にも、今の自分の状態は明らかだった。
羞恥に顔を赤らめ、顔を背ける。そんな李斎の耳に唇を寄せ、李斎。と、
甘い声で驍宗は囁く。どうされたい、李斎。と。背けたまま、知りません。
と答えると、苦笑するような声が聞こえ、つぃ。と、軽く衣を弾かれた。
堅くなった頂きはそれだけでも強く反応し、一瞬びくりと身体を震わす。
くちづけとともに、それは舐め取られ、軽い嬌声を、李斎は挙げた。
 衣の代わりと掌にそれは覆われ、驍宗の思いのままに、かたちを変える。
その度に、李斎は零れ落ちそうになる嬌声を必死に噛み殺し、瞳を瞑って、
それに耐えた。手で、指で、唇で、指で――。一頻り驍宗によって弄ばれた後に、
吐いた息と共に、ぽろぽろ。と、李斎の眼から両の涙が零れ落ちた。李斎。と、
自分を慮る驍宗の声に、眼を開き、覆い被さる驍宗を涙目で見つめた。

 「驍宗様……。何故で、御座いますか。――御戯れであるというならば、
これは、あまりにも酷な仕打ちで御座います――。」
 李斎。と、再び自分を呼ぶ声の後に、一つ驍宗は溜息を吐いて、
そっと両手の縛めを解き、李斎の背を抱き起こす。
 「やれやれ、貴公は聡いくせに、妙なところで鈍くて困る。」
 苦笑をしながら、驍宗はその指で、未だ乾きらぬ涙を拭う。李斎、私は。
 「私は、貴公の力を認めている。だからこそ、此処へと招いた。
そして、戯れと先刻貴公は言ったが、それは異なる。一時の想いのたけに身を任せてしまうほど、
私は弱くも無いし、貴公を易い者とは捉えていない。他の誰でもない、
貴公だからこそ、求めるのだ。男として、これは不自然なことかな?」
 「……し、しかしながら。私のような無骨物の、どこが……。」
 「では、初めてこの寝台に互いに契りを結んだ夜。何故(なにゆえ)私が貴公を選んだとお思いか。」
 言葉に、かっと紅くなる。俯き、その時に思ったことを正直に、音にする。
 「……恥ずかしながら、わたくしを、好いてくださるものと想い……嬉しく、お受け致しました。」
 くつくつと笑いながら、指で李斎の顔を上げさせ、柔らかなくちづけをそこに落とすと、
「だから、貴女が好きなのだ。」と晴れやかに、驍宗は笑った。
 「お分かりになって居られないぬ故、少々仕置きをと思ったが。
どうも、酷過ぎたようだ。許して貰いたい。――御自愛を、等と述べるくせにお逃げになるから、
つい、辛く当たってしまった。」
 言われた言葉に、はっと自分の至らなさを思い返し、恥じ入る。
申し訳ございませぬ。と、驍宗の腕の中で小さくなった。貴公は。と、言葉が紡がれる。

 「貴公は、どう思われているのか。改めて、お聞きしても宜しいか――?」
 「――私は――。」
 ふと、見上げる。紅い、視線がぶつかる。惹かれていたのだ、はじめから。
出会うその前から、噂を耳にした、その時から。麒麟は王を選ぶ。
それと同じように、官は仕えるべき王を直感する。そうして男女の絆もまた、
それと同じようなものだ。だから、本当に、会ったその日から、ずっと――。
 「――お慕い、申し上げておりまする――。」
 笑みとともに先刻までとはまた違う、甘く深いくちづけが李斎は与えられ、
長いくちづけその後に、先刻の侘びが欲しい。と耳元で囁かれ――はい。と、
恥じらいながらも李斎は応じた。
 衣を解き、熱持つそれを手にすると、おずおず。と李斎はそれに舌を伸ばす。
知識はある。他の男と床を共にした経験も、また、ある。だが、
その数といっても同じ女官たちに比べれば圧倒的に少なく、何よりも、忙しさと、
生来の真面目な気質があってか、長い年月右手で数える限りであった。
結果、知識としては持っていても、こうしたことをする経験としては皆無となる。
これで本当に良いのかどうかも、不安になる。ただ、懸命に。歯が当たったりしないようにと、
舌を伸ばし、丁寧に舌を這わせる。驍宗からしてみれば、巧拙云々ではなく、
普段無骨なる相手が懸命に自分に奉仕するその様が何よりも好いのだが、
流石にそれを告げられよう筈も無い。ただ、李斎が紅い舌を懸命に伸ばしながら、
必死に行うその様を見て、目を細めた。もう、良いと制すると、
今度は自分が李斎を押し倒し、片足を、おもむろに持ち上げた。
 「ぎょ、驍宗さっ!?」
 先の行いで既に幾らか潤っていた其処に、舌を這わせる。
途端のことに李斎は身を堅くし、震わせるときゅ、と寝台の布地を掴んだ。
 「や、あッ!あッ、あぁん!」
 普段と異なる甘い声。酔わしているのは何時もこれだと、その様に内心苦笑する。
指をすっと差し入れると、大分濡れたせいか、躊躇いも無く其処は受け入れた。
もう少し遊んでみたい気もしたが、先程のことが頭を掠め、留めておいた。
自身をあてがい、射し入る。強く、鳴いた。
 動く度に洩れる嬌声。深く射し入れようと、或いは受け入れようと、
自然足は腰に回され、互い、全身で相手を受け入れる。合わさるところからは粘着性の水音と、
互いの肉体の打ち付けれらる音。声を挙げ、一際高い声を李斎は挙げると、ぴん、と腕を、背筋を張った。
とさり、と力なく腕を落とし、はぁ、はぁと上気し、潤んだ瞳で息をしている。
驍宗はそんな李斎を潰さぬように、手を付くと、再びくちづけを李斎に落とした。
 「驍宗、さま……。」
 うっとりと自分を見上げる李斎の耳元に、今宵は、長いぞ。とだけ告げると、
抗議の声も聞かずに李斎の身体を抱き上げ、自分の膝の上へと乗せる。
そのまま首に腕を絡ませ、腰を支えていた手を、位置を定めて解き放つ。
 「!ぁああああぁあっつ!!」
 そのまま微動だにせず、びく、びく。と李斎が自身のそれを締め付けるのを感じ取る。
そこがそうであると、腕にも力が篭もるのか、首に回した腕の力を強め、身体はより密着し、
李斎のやわらかな胸が、驍宗の胸へと押し潰された。
 「……李斎。」
 呼びかけに、驍宗、さまぁ。と甘い返事がした。瞳は涙で滲み、
普段はきはきとした態度と口調であるこの女の、そうした様にまた酔う。
李斎、動け。と、そう命じると、きゅっと眼を閉じながらも躊躇いがちに、
李斎は自ずから身を動かし始めた。出し入れされるその度に、ふっ。うっ。
と嗚咽のような声が洩れる。それから幾度目にさしかかったところだろうか、
すっと背を支え、寝台に李斎を横たええると驍宗は一息に貫いた。途端、
大きな嬌声がわきあがる。や、あぁ!と。涙を流し訴える李斎を無視し、
驍宗は止めずに幾度も、幾度も己の身体を打ちつけた。肉も、水も、音も、
吐息さえをも交じり合い、互いの名も、言葉として紡げぬようになり、
李斎は声にもならぬ嬌声を挙げると背を弓のように張って沈み、それを見た驍宗もまた、
小さなうめき声をひとつ挙げると、自分の下に横たわる李斎を、潰さぬようにと沈み落ちた。


 「王にとって、民とは自分の子のようなものだ。」
 さらり、と。髪を一房掬い上げ、それにそっとくちづけをする。
李斎はされるがままに、王である驍宗の腕に頭を乗せて、ただ静かにそれを聞く。
 「麒麟と王との関係は、主従だ。だが、それだけでもあるまい。
言わば、家族のようなものでもあろう。……李斎よ。願わくば未だ稚き台輔の母となってはくれぬか。」
 紅い目は強く。けれども優しい。李斎はその目より面を背けず、わたくしなどで宜しければ。
と、そう、前置きして返事に応えた。
 その答えに、驍宗はふ。と紅い瞳に弧を描かせると、配下にして妻なる者の唇へとそっと、くちづけを落とした。
 「李斎?」
 青年の呼び声に、はっと頭を上げる。どうやら少しの間、
眠ってしまっていたらしい。自分の後ろに座る青年が――あのとき、
幼かった台輔が心配そうに、少し休もうかと心配げに声を掛ける。その声に、
大丈夫ですよ。と優しく言葉を返す。慶を発ったその内から気を張りすぎていたせいか、
少しばかり、疲れがあった。
 「ねぇ李斎。休みたければ休んでも良いよ。奇獣に乗る程度なら、僕にも出来るし。
とらと飛燕だって休みながら行っているんだ。僕等も、ここはそうしよう。」
 「ですが。」
 「大丈夫だよ。飛燕だってそれが良いと思っているよ。ねぇ、飛燕。」
 泰麒の言葉を理解しているのか、していないのか。言葉にくぉん、と軽く吼えた。
ね、そうだって。と笑いながら泰麒は言う。
 「だから、ね。李斎?」
 「……分かりました。でも、先程休みましたので、その後台輔にはお願い致します。それで宜しいですか?」
 うん。いいよ。と、くつくつと笑いながら泰麒は答える。きっと、
変わらず生真面目な自分を思って、可笑しく感じているのだろう。
と、そこでとん。と李斎は背中に軽い重みがかかるのを感じた。ふと振り向くと、
泰麒が自分の背に頭を乗せている。
 「……李斎の背中って、お母さんみたいだね。なんだか、そんな感じがする。」
 実を言ってしまえば、泰麒は実の母親にそうして甘えたことなどない。
親代わりとなっていたのが女怪であり、女仙であったが故に、
先刻の自分の台詞が果たして正しいのかどうかなども、知らなかった。
そうして、李斎もまた、流された泰麒のかつての境遇など、知らなかった。
 「……よろしゅう、御座いますよ。台輔からそう思われるのは、光栄の至りで御座います……。」
 また、泰麒も知らなかった。李斎が何故そのように答えたのか。
それが、単なる上辺だけの感謝の意ではなく、心からのものであるのだということを。
ただ、泰麒は有難う。とだけ呟き、李斎は自分の腰に回された手に、そっと触れた。
 きっと、生きて行ける。
 李斎は漠然と、そう思った。
 驍宗は自らの子を民と言った。そして、泰麒もそのようなものだと。ならば、
自分がこうも泰麒を、そして戴の民を愛しく思うのは当然のことではないだろうか。
己の子を厭う母親が、一体どこにいよう。
 泰麒と出会えたのは、驍宗のお陰であり、こうして再び泰麒と出会えたのは、
景王の。いや、景王だけではない、多くの人々の尊い慈しみの心によって、与えられたものだ。
この希望を、決して無碍にはすまい。隻腕となれども、この手を決して離すまい。そう、思った。
 見れば、中天にあった月はその姿を薄れさせ、朝日を迎えようと空は白ばみ始めている。
この、暑い雲の下にも、どうか暖かな陽の光が照らしますようにと、
李斎は誰に祈るということもなく、そう願った。





 <鴻慈
路木。荊柏を謂ふ。泰王驍宗願ひて得たり。季を問はずして白花開き、
実は鶉の卵の如し。乾きて炭と成せり。
(元、荊柏は黄海にのみ育てり。是により戴の民冬を越す。故に民、
鴻基におはす者の恵む慈しみとして是、鴻慈と呼びたり。)
 是故に転じて人より受けし慈しみによる希望を謂ふなり。>
                          『群植録』

                             <了>

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